2026年7月30日、兵庫県朝来市のウェブフォントジャパン本社で座談会を開きました。お迎えしたのは、アンバサダーに就任された3名。SNSやWebセミナーなど、クリエイティブの最前線で活躍するみなさんです。前半にフォント制作についてご紹介したのち、普段は聞けない仕事についてのお話や、活動のモチベーションについて、そしてもちろんフォントについても伺いました。そんな様子をお届けします。
なお、ベーコンさんは北海道が拠点のため今回は欠席です。ベーコンさんとは、どこかのタイミングでお会いできましたら、レポートさせていただきます!
photo: Akito Sakiyama
2026.09.02


鷹野さん
鷹野 雅弘さん(たかの まさひろ)

株式会社スイッチ

DTPやウェブサイト制作など、25年以上、第一線で手を動かし続け「制作→執筆→講演」のサイクルを回す日々。現在の活動のテーマは「デザインに関わる人のスキルと心を応援する」。2015年から大阪芸術大学 客員教授。 2017年からAdobe Community Evangelist。ウェブ制作者向けのセミナーイベント「CSS Nite」や、DTP制作者向けの情報サイトDTP Transitを、それぞれ2005年から継続している。テクニカルライターとして30冊以上の著書を持ち、総販売数は18万部を超える。主な著書に『10倍ラクするIllustrator仕事術(増強改訂版)』(共著、技術評論社)など。

いとくにさん
いとくにさん
香川を拠点に会社員として働く傍ら、個人でも活動を続けるクリエイティブディレクター。最新の生成AIを活用したデザイン術や動画編集の書籍を執筆・出版している。iPadを使ったクリエイティブに関する書籍にも多数参画し、「歌で覚えるiPadイラレ」や「ミュートしないと理解できないチュートリアル」といった独自の切り口で、PCからタブレットまであらゆるツールを遊び倒す「楽しいモノづくり」を日々更新中。 Adobe MAXをはじめ各地での登壇を通じ、モノづくりのワクワクを伝道している。Adobe Community Expert。著書に『Nano Banana & Photoshop 生成AIデザインアイデア120+カタログ658』(MdN)など。

ゆかまるさん
ゆかまるさん
関西(滋賀)拠点のフリーランスデザイナー。 Instagramフォロワー5.8万人(2026年2月時点)のデザインアカウントを運営。Adobe llustratorを中心に制作と発信活動を行い、「ゆかまるデザインスクール」を主宰し、案件を通じて学ぶ実型教育を展開している。Adobe Community Evangelist / Adobe Community Expert

──気になる皆さんのお仕事について伺いました。

── 鷹野さんは株式会社スイッチに所属されています。普段どういったお仕事をされているのでしょうか?

鷹野さん: 会社は31期目になります。 元々は紙(印刷物)からのスタートで、簡単にいうと編プロ(編集プロダクション)というか、本をつくるお仕事をしていました。

いとくにさん: ご自宅に伺ったこともあるんですが、そこが事務所なんですよね。

鷹野さん: そうですね、僕は事務所に住んでいるので、ライブ配信もそこで配信しています。起きて1秒で仕事ができますね。

鷹野さんスナップ

── 動画配信をされる時もご自宅なんですね。ということは背景の本棚は本物ですか?

鷹野さん: あれは合成なんです。といっても自室の本棚を撮影して、ブルーバックで抜いて写真として合成しています。本もたくさんあって下手な本屋さんよりすごい量の本があります。

鷹野さん: 僕の会社では、フォントを自由に買っていいというルールがあります。フォントファイルは50GBくらいあって、とりあえずなんでも買いますね。

── OH MY FONTのリリース時に、一番最初に登録いただいたのが鷹野さんでした!

── いとくにさんと言えば、ショートカットやツール名をテーマにしたAdobe製品のオリジナルソングですよね。

いとくにさん: よろしくお願いします。 香川県に住んでおります。いとくにです。モットーは「楽しくクリエイティブしよう」で、そんなことを、みなさんに伝えられたらいいな、と偉そうに言っています。もともと印刷会社に18年くらいいて、入って2年目くらいで初めて書籍を手がけました。それが鷹野さんの本でした。

いとくにさんスナップ

鷹野さん: イラレ歴何千時間だっけ?

いとくにさん: あれ、なんて書いてたっけな。X(旧Twitter)を始めた時、僕が何者かわからないなと思ったんです。同じグラフィック業界でも、もっと上の人とは戦えない。それで、映像クリエイターの人にも見てもらえるようにIllustratorのことを発信していました。ただ、それだけでは弱いので、プロフィールに「イラレ歴何千日」と書いたんです。それで、鷹野さんが「あれいいね」って言ってくれて。

鷹野さん: 言ったっけ(笑)

いとくにさん: 本人が覚えてない(笑)初めて会った時に言ってくれました。それで映像クリエイター向けにXをやっていたら映像関係の友達がたくさん増えて、そこで僕自身も興味を持ったのでAfter Effectsなどを勉強して、自分のデザインも動かしたくなって、YouTubeにも投稿を始めた。という流れです。 僕は、セッション(トーク)では「つかみ」を大事にしていて。鷹野さんが主催する「#朝までイラレ」の1回目に出させていただいたときに「先ず、僕の歌の映像を出して、そのあとに本編を話し始める」という試みをやらせていただいて、そこから僕のスタイルが決まりました。10分のうち5分くらいを「ネタ」に使うこともあります。そうするとみなさんに喜んでもらえるし、クリエイティブって楽しいんだ、ということを伝えたいですね。

鷹野さん: 最近は「肉まん」がウケてたよね?

いとくにさん: はい、6月末に大阪であったアドビのイベントで登壇したのですが、Adobeからのリクエストが、「AIを使った事がない人に向けて使いたいと思わせて欲しい」とのことでした。そこで、よくあるグッズ制作の参考としてAIって使えますよというのを実例で紹介したんです。グッズと聞いて一般的に思いつくのがアクリルスタンドとかですが、僕は1発目に肉まんを出しました。そしたらまあまあウケました。

── 唐突な肉まんですね(笑)。もう1つお聞きしたく、いとくにさんのキャッチコピーの「あなたの心のカレーパン」とはなんでしょうか?

いとくにさん: そのキャッチコピーにした理由は、カレーパンって毎日は食べないけれど、たまに無性に食べたくなるでしょう? そういう存在でいたい。食べて、「うまい!」って言って、「また来るね」って帰ってまた来てほしい。楽しませられたら、という思いでやっています。ちなみにカレーパンはコーヒーともめちゃくちゃ合いますよ。

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── Instagram、Xにて初心者デザイナーに向けたHow to紹介で目まぐるしい活躍をされているゆかまるさんです。

ゆかまるさん: 今年からAdobe Community Evangelistになりました。まだデザイナー4年目で、前職はストレッチのトレーナーです。デザインに足を踏み入れたのは、ストレッチトレーナー時代に「ロゴや名刺が必要だな」と思ったのがきっかけです。初めて触ったのがIllustratorのiPad版でした。なので、専門的なお話は、まだ分からないことも多くて。

── まだ4年目なのですね! デザイナー歴からは想像できないスピードでの活躍をされています。

ゆかまるさん: いろんなご縁のおかげです! デザイナー3年目のころ、Adobe MAX Japanに登壇しました。鷹野さんのAdobe Expressの配信に初めて出られたのが、1年前くらいでしょうか。

ゆかまるさんスナップ

── お魚のキャラクターを粘土でも作られていましたよね。

ゆかまるさん: あれは昨年(2025年)末の「#朝までイラレ 5」だったかと思います。私も初心者の方に「壁を低く感じてほしい」という思いで、InstagramでTips動画を発信しています。その一環で、デジタルだけでなくアナログにも寄せています。たとえば、ターンテーブルで回した魚のイラストを見ながら、粘土で立体的なキーホルダーを作る。そんなことを10分で実演したりもしました。本当に「3分クッキング」みたいな感じですね。 配信以外に個人制作もしていて、ステッカーを作ったり、小田原漁港とのコラボイベントでクリアファイルを配ったり。最近は「お魚・釣り好きデザイナー」としても活動しています(笑)。グッズ制作では、OH MY FONTに収録されているフォントも使いました。

──フォントの楽しさは選ぶ時にある?好きなフォントや新作フォントへの反応を伺いました。

── フォント制作会社のアンバサダーはあまり聞き慣れないかと思いますが、実際に受けていただいた理由を聞いても良いでしょうか?

いとくにさん: 僕はもともとデザインフォントが好きで、「ショウネンオト」がお気に入りでよく使っていたんです。プラスでOH MY FONTになると文字数が増えて、いろんな書体が使えるので、「これも試してみたい」と思っていました。そんな時、たまたまフォントのアンバサダーのお話をいただいて。そんな話は聞いたことがなかったので、ワクワクして。それでお受けしました。

ゆかまるさん: 私も「キリギリス」がすごい好きで、個人的にフィードでも紹介していたのですが、そこから「フォントを作っている会社さんがあるんだ」という驚きから入って。他にもこんなに可愛いフォントもあるんだなと思っていました。あと文字って最初は、デザイナーさんがチラシに合わせて一つひとつ文字を作っているものだと思っていて。「フォントってソフトに収録されて組み込まれているんだ」という驚きも大きかったんです。それを初心者の人にも伝えたいと思ったのがきっかけで、お誘いを前のめりで受けました。

鷹野さん: 僕は内藤務さん(MUON)経由でご連絡をいただいて、やるしかないなと(笑)

内藤務さん: そっこーでOKの連絡が来ました(笑)

一同:

── 今、新作フォントを先行で見ていただいてるのですが、気になるフォントはありますか?

鷹野さん: 「5月の風」を見たら、早く使いたくなりますね。キラーフォントです。これを使いたい人も多いと思います。

いとくにさん: めっちゃわかります!

ゆかまるさん: 「5月の風」いいですよね!新作フォントだと「カカシマル」も可愛いですね。アジフライとか書いてみたい!

新作書体 5月の風 / 玲月 新作書体:5月の風 / 玲月
新作書体 カカシマル / 山田正彦(FONT1000) 新作書体:カカシマル / 山田正彦(FONT1000)

スナップ3S_02

── ゆかまるさんの推しフォントで「漫画チック」を選んでいただいていました。これはなかなか珍しいフォントですね

ゆかまるさん: 見た瞬間にガチャガチャだ! と思って、ガチャガチャのデザインってカプセルみたいな、丸モチーフがデザインによく使われているんですが、この書体を見た瞬間、「回したい!」ってワクワクしました。パッと見のイメージがすぐ入ってくるのがいいですね。 今日、漫画チックな書体の一覧を見られて、個人的にすごく嬉しかったです。ふだんフォントを一覧で見る機会って少なくて。全部の文字を打ってみないと、どれが可愛いのか分からないので。門構え(見本の作り)がすごく良くて、みんなに見つけてほしいなと思いました。

いとくにさん: 僕は漫画がめちゃめちゃ好きで、「ショウネン オト」を推しています。ドラゴンボール世代なので、「ドーン」「ゴゴゴ」みたいな効果音的な書体をずっと探していたんです。でも昔はそういうフォントがなかなか無くて。濁点が線のどこにかかっているか、みたいな“漫画的”な描き方が絶妙で。漫画家の方が作ったフォントというのがすごくいいなと思って、喜んで使っています。 あとこのフォントはllustratorの文字タッチツールと相性バッチリです!

── 鷹野さんは元々弊社の取り扱いブランドのFONT1000ユーザーであり、「とんぼB」などもお好きとか。

鷹野さん: はい、「とんぼB」も「キリギリス」もFONT1000ですよね。もう20年くらいたちますかね。そうなってくると普通はちょっと手垢がつくというか、古くなってもおかしくないんですが、全然そんなことはない。今でも最前線で使われつつ、少しレトロっぽいところが好きですね。「キリギリス」のほかに「Jグー」も、数字も可愛いですしね。

OMF-とんぼB / 成澤正信(FONT1000) OMF-とんぼB / 成澤正信(FONT1000)

OMF-キリギリス / 七種泰史(FONT1000) OMF-キリギリス / 七種泰史(FONT1000)

OMF-漫画チック / 棚瀬しんじ(FONT1000) OMF-漫画チック / 棚瀬しんじ(FONT1000)

OMF-ショウネン オト / Yoshimine(MUON) OMF-ショウネン オト / Yoshimine(MUON)

ゆかまるさん: 今からフォントを使いたいっていう方には、収録されている中から、自分のお気に入りフォントを見つけてほしいです。「このフォントを使いたいからデザインを作りたい」という順番になってくれたら嬉しい。宝探しみたいにワクワクしながら探してほしいですね。まだまだ増えていくと思うと、それも楽しみです。

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── ありがとうございます!

──ここからは個別の活動について深掘りです。三者三様に活躍されている皆様の原動力や楽しみについて伺いました。

── ゆかまるさんに質問です。SNS発信を精力的にされていますが、継続することが難しいなと思う方が多くいると思います。そんな中、ゆかまるさんが続けていて良かったと思うことはありますか?

ゆかまるさん: 何より、こうやって今みなさんと出会えているのがSNSのおかげです。Adobeのソーシャル担当の方からDMをいただいて、Adobe Expressのフィード投稿が最初の仕事でした。そこから正式に声をかけていただけるようになって。たくさんのデザイナーがいる中で、その方とつながれたのもSNSのおかげです。猛者がたくさんいる中で、“ぽっと出”が正面から勝とうとしても難しい。でもSNSをやっていたから見つけてもらえた。そのつながりが圧倒的に大きいです。

スナップ_06_ゆかまるさん

── こちらもパワーをいただけます!

──香川在住のいとくにさんに質問です。弊社も兵庫県朝来市(あさごし)という地方で活動しています。今、地方在住のクリエイターも増えている中、都市部以外で活躍するために取り組まれたこと等はありますか?

いとくにさん: ゆかまるさんと一緒ですが、やっぱりSNSですね。僕も鷹野さんのDTP TransitからDMが来て、ビビりましたが、特にXが一番でした。僕も「どこにいてもデザイナーとして活躍できる」を目標にしています。認知していただけることと、実際に人と出会えること。映像制作をされている方も、Xで見てくれてDMをくださり、仕事につながりました。ただ、繋がって終わりではなく、その後積極的に人とリアルで出会いに行くことも大切だと思います。セッションは緊張するけど、イベントの懇親会が一番楽しいです!

── 実際に足を運んで来ていただけるのは、うれしいですね。

── 鷹野さんは『CeeBeeDee(旧 CSS Nite)』や『朝までイラレ』などのオンラインイベントを運営され、数多くのクリエイターとセッションを交えながら配信をされていますが。配信を毎週続けられる行動力とモチベーションは、どこから来るのでしょうか?

鷹野さん: 講師経験のある方ならわかると思いますが、30分のセミナーを作るのにもかなりの時間をかけています。 それで、(ゲストに)「この話聞かせてよ」っていうのを一番前の席で、「これは何?」とか質問を交えながら聞けるのは、実はめっちゃ面白いことなんですよね。誰かのために行うというより、配信している僕が一番楽しんでいます。なのでそんなに苦じゃないですね。

──座談会後、今後のOH MY FONTの取り組みについて話題が広がりました。

鷹野さん: 今日聞いて思ったんですが、僕はここに来るまで、OH MY FONTは、単なるフォントを提供するサービスだと思っていたんですね。でも、それ以外の「つくる」話がとにかく面白い。この面白さを伝えないのはもったいないと思いました。「自分も作ってみよう」というきっかけになるし、ユーザーも一緒に盛り上げて作り上げていく——そんな形ができそうだなと。

ゆかまるさん: それ、めちゃくちゃやりたいです。打ち合わせの様子をそのまま流すだけでも面白いと思う。「こんなことをしているんだ」と伝わるので。

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鷹野さん: 「この書体にこの文字を追加してほしい」みたいなリクエストや投票で、ユーザーを巻き込む仕組みも面白いですね。自分が投票した文字が入ったら嬉しいし。 まずは今ある書体の“文字を足していく”ワークショップがいいと思います。シートを埋めていけば自分の書体が作れる、という体験。最初のきっかけができれば、「この字、いいじゃん」と一気に面白くなる。というのを今日聞いて思いました。 以前「子供の字をフォント化したら?」という話もしていて。デザイナーが作るものじゃなく、それぞれの人の字が形になるのは、すごく面白い広がりだと思います。

いとくにさん: クラスで何文字かずつ分担して「何年何組フォント」を作る、なんてのも面白そうですね。ぐちゃぐちゃな文字になるかもしれないけど、それも味で。体育祭でお披露目、みたいな。

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和気藹々とした中、楽しい座談会となりました。 皆様本日はありがとうございました!